華道 自然佳風
大正8年(1919年)、岡山県笠岡市に於いて創流され、育まれてきました。
自然佳風は、自然の中に織りなされる趣きを作り、楽しむ生け花芸術です。見上げてみる伸びやかな木々から足元に咲く可憐な小さな草花まで、植物の生きる姿の佇まい。それらを取り巻く季節の移り変わる様子など、自然の中に身を置いて感じられる様々な想いを、形にして現す鑑賞華です。

精能(せいのう:植物の心)
植物は生きています。生物です。生きている植物は、精神・心を持っています。多くの植物の姿は暖かい方へ向いて伸び、太陽の光を浴びようと明るい方へ向いて伸びています。それは人によって曲げられたものでも、風に吹かれて偶然傾いたものでもありません。植物自身が、生きていくために最も都合の良い方向を選んで成長した結果です。とてもゆっくりですが、自分の意志で動くのです。
自然佳風ではこの植物の精神・心のことを、精神のはたらきと書いて「精能」と呼んでいます。
今、花材として目の前にある植物の姿も偶然できたものではなく、植物自身の精能によるものです。生ける際、その植物の精能のおもむくとおりに立てた姿こそ、最も美しい姿です。
自然佳風芸術の根本として求めるものは、大自然の中で人間の精神にわきおこる「美し味・奥床し味・高尚味・雅味・面白味・渋味とか云う様に言葉に現わす事の出来ない味わひ —初代一齋論法解説より」です。 植物を生物として観賞する以上、その味わいの源は植物の精神・精能より生ずるものなのです。

生き生きとした姿に生ける
「手にしたる花の心を 心してみよ」
この言葉は、初代一齋が自書の『論法解説』の中で言ったものです。手にしたその花材はいかにして生きていたか、その精能はどちらに伸びようとしているか、よく見てわかってやれよという言葉です。
其々の花材には一番生き生きとした姿があります。それはその植物が今まで生えていた姿に他なりません。その姿を見つけるための簡単な自然の定まりがあります。たとえば、
- 植物の葉の表は陽の光を浴びようとして上を向いている。
- 太い枝から出た小枝の多くも上方に向かって伸びる。
- 小枝にふいた小さな芽も上に向く。
- ほとんどの花は表を上にして咲く。
...等です。ですから、目の高さよりも高い葉や花は裏が見え、目の高さよりも低い葉や花は表が見えます。もちろん下に向かって垂れる枝物や、前や下を向いて咲く花物もあります。その植物では、それが自然の姿です。

また、個々の植物ごとに、それぞれ生え方の定まりがあります。密集するもの、低く生えるもの、枝を横に張るもの真上に向いて茎を伸ばすもの、くねるもの等、生え方は様々です。そして、それらを自然の姿のままに立てた上で、それぞれの個性を生かして剪定し、基本花形に添ってまとめます。そうすると、そこにはおのずから精気溌剌とした野山の様子が現れてくるでしょう。大自然の風景は、自ら精能を持った植物たちの集合なのです。

自然佳風のあゆみ
1919年(大正8年)2月
- 自然佳風の誕生
- 初代一齋(当時21歳)が独自の生け花論法を『自然佳風』と名乗る
- 創流時の会員は初代一齋のみ
1925年(大正14年)
- 自然佳風投入森花研究会宗家として指導を始める
- 初代一齋により福山支部(福山市米屋町)と倉敷支部(倉敷市船倉町)が開設
1929 年(昭和4年)
- 自然佳風投入森花大会(生花展推定第1回)が始まる
1930 年(昭和5年)
- 天皇陛下来福。横尾にて19名による奉迎献花
1936 年(昭和11年)
- 福山医師会館に於いて自然佳風投入森花大会が始まる
1943 年(昭和18年)
- 11月11日 賀陽宮妃殿下来福。初代一齋が御座所に献花(福山市 善隣社と芦品郡 景先会の2か所)
1948 年(昭和23年)
- 11月13日 天皇陛下来福。天満屋にて5名による奉迎献花
1949 年(昭和24年)
- 12月 『論法解説』を出版
1950 年(昭和25年)
- 笠岡華道諸派連合会を結成(昭和28年に笠岡華道連盟へと改称)
- 初代一齋は結成メンバー8人のうちの1人として加入
- 3月 『春の部』を出版
- 6月 『夏の部』を出版
- 10月 『秋の部』を出版
- 12月 『冬の部』を出版
1951 年(昭和26年)
- 4月 教授研究会「白菊会」を発足(福山市)
1954 年(昭和29年)
- 「みどり会」を発足
- 第1回生花展を開催(笠岡市)
- 1月 『自然佳風研究科』を出版
1955 年(昭和30年)
- みどり会教授研究会が始まる(笠岡市)
1959 年(昭和34年)
- 8月 福山地方華道連盟結成流派として加入
- 10月 教授研究会「みとし会」を発足(福山市)
1968 年(昭和43年)
- 2月 自然佳風『水揚げの部』を出版(著:暫定二代目一齋)
1969 年(昭和44年)
- 2月 教授研究会「めばえ会」を発足(福山市)
- 10月 自然佳風『花形解説』を出版(著:暫定二代目一齋)
1980 年(昭和55年)
- 自然佳風岡山支部を設立
- 岡山県華道連盟に加入
1985 年(昭和60年)
- 教授研究会「佳風会」を発足
1990 年(平成2年) 8月
- 『生け花の手ほどき』『奥への手引き』を出版(著:三代目一齋)
1993 年(平成5年) 9月
- 創流75周年。記念行事を開催
1999 年(平成11年) 10月
- 『四季の稽古花600』を出版(著:三代目一齋)
2019 年(令和元年) 10月
- 創流100周年。記念生花展を開催
2025年(令和7年)3月
- 『いけばな手引き』を発刊
